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    2018.04.24 コラム
    カスタマーサクセスの原動力、好きなことを仕事に。~人と人をつなげるコネクタという仕事とは?

    株式会社トータル・エンゲージメント・グループは、自らの強い思いで創り上げた商品・サービスを提供し、これに共感したお客様が購入するという、カスタマーサクセスの状態に到達することを目標としています。

    この状態を創り上げる原動力は、“好きなことを仕事にする”ということ。好きな気持ち、ワクワクした気持ちで仕事に取り組むことをいち早く実践されてきた、コネクタの日比谷尚武さんに、仕事に対する思いやこれからの働き方などについて伺いました。

    人と会って話をし、人と人をつなげるコネクタという仕事

    池田 小売業や飲食業において、好きな気持ちで仕事をする人を増やさないと売上はアップしない、と我々トータル・エンゲージメント・グループでは考えています。日比谷さんはまさに好きなことを仕事にしていますが、このコネクタとはどんな仕事で、どのような経緯で就かれたのでしょうか。

    日比谷様(以下敬称略) Sansan株式会社で社外の人材や知見を社内の課題解決のためにつなげる「コネクタ」職に2016年11月まで就き、現在は業務委託契約を結んでこの仕事を続けています。Sansanは「ビジネスの出会いを資産に変え、働き方を革新する」をミッションに掲げ、法人向け名刺管理サービス『Sansan』と個人向け名刺アプリ『Eight』を提供している企業で、創業メンバーが私の中学・高校時代の同級生なんです。

    元々は大学卒業後にNTTソフトウェアに入社して電子マネーの実証実験プロジェクトなどを担当し、4年間在籍していたんですが、既に出来上がった会社で修行を積むのは終わりにして、よりチャレンジできる働き方がしたいと思い始めました。そこで、私が卒業した慶應義塾大学環境情報学部(SFC)の後輩が自社開発したWebサービスを展開する学生ベンチャーで、規模拡大を目指すにあたり、私のような人を探していると聞いて、転職することにしました。

    そこでは、システムインテグレーション(SI)事業の立ち上げに携わって、2年目には取締役に就任し、ひたすら走りながらマネジメントに関わりました。自身の仕事に膨大なエネルギーを注ぎ、会社も年々大きくなったのですが、学生の時のように新しいサービスが生まれる場にいたいという思いを再び持ち始めていた時に、Sansanの創業メンバーから自分たちの会社を立ち上げると聞きました。私はベンチャー経験者としてサービス開発の段取りアドバイスとかビジネスプランのレビューをしていたら、一緒にやろうという流れになり、創業から1年ほど遅れてSansanに加わりました。

    マーケティングを担当しながら、広報の必要性を感じてメディアの人たちと付き合い始めて……と行動しているうちに会社が仕組み化されてきたタイミングで、これまでに行ってきた社外とのつながりを作ることを仕事にしました。私は人と会って話をするのが好きで、あちこちに行って話をつけてきたんですが、業務でなくても勝手にやってしまうほどで(笑)。肩書きを「コネクタ」にしました。

    コネクト帳を作り、クォーター単位で目標設定。

    池田 人と人をつなげるのが仕事になるとは、非常に面白いですね。しかし、コネクタのKPI等はどのように設定されているのでしょうか。

    日比谷 クォーター単位で目標を立ててやってきました。まずは、コネクト帳というものを作って、何月何日に誰と誰をつなげたと日々つづりました。一日に4件くらいつなげていたので、1クォーターで200、300件ほどになります。それを人事考課の時期になると、実際につなげた部署や役員に評価してもらい、「パスがあらい」なんてコメントを返されたりもしていましたが(笑)、Sansanで体現したい価値を地で行き、実際に役立つことも証明されました。仕事として他のことをやらないという理由もあり(笑)、1年半前に業務委託に切り替えました。週の2、3日分の稼働か成果を出すという契約内容にしています。

    コネクティングは元から大好きですね。大学生だった95年ごろ、ホームページの製作ができたので、キャンパスがあった神奈川・藤沢から東京にきてアルバイトをたくさんしていましたし、就職してからも面白いプロジェクトがあれば家に人を集めてやっていました。新しい技術で何らかの形となり、さらにそれがビジネスになっていくのを間近で見ることができたので、その時代の熱をひきずっているのかもしれません。


    池田
     90年代に私はIT企業を経営していたのですが、日比谷さんと同じ大学の優秀な人材がインターンとして働いていましたね。その後、就職して、ITの知識はあっても社会人経験がないのにウェブマスターの役割を担うことになってしまい苦慮している若者たちがいたりして、仕事終わりにまた私の会社に集まってきて課題を解決して……という熱のあるいい時代でしたね。

    日比谷 現在は、5、6プロジェクトに関わっていています。企業・団体向けストーリーテリング®︎ プラットフォームの企画・開発・運営を行う株式会社PR Tableのエバンジェリストのほか、4,5社の広報アドバイスや外部コネクションの提供、社団法人at Will Workの理事、ロックバーの運営などを務めています。

    今、働き方改革が話題となり、賃金や労働時間、女性の働き方などが取り上げられていますが、これらは厚労省観点の話です。at Will Workでは、「すべての人にとっての働きやすい環境づくり」を、テーマに掲げ、生産性向上のためのIT活用や社会人の再教育、人材の流動化など主に経産省が推進するテーマも扱っています。年に1度のカンファレンス開催を中心に、コツコツとセミナーを開催したり、事例や政府の取り組みを発信しています。カンファレンス開催される2月前後はかなり集中的に仕事をしますが、基本は月2回理事会をテレカンで行っています。理事は5人いるのですが、それぞれ経営やプロジェクトマネジメントなどをしており別々の活動をしているので、リアルに顔を合わせる事は滅多になく、原則は独自の判断やアクションで推進するスタイルをとっています。全員が集まるのは年に2,3回くらいじゃないでしょうか。

    今後は業界団体・行政とのコミュニケーションに力を入れていきたい。

    池田 日比谷さんは、非常にユニークな働き方をされていますね。今後、どんなことをやろうとしているのでしょうか。

    日比谷 ベンチャー企業やフリーの方々の周囲には、私のよう人はいっぱいいるように思われますが。私が付き合っている方々はこんな感じなので、これが普通だという感覚です。学生時代にフリーランスをやっていましたから、よく長いこと勤め人をやれたと思っているくらいです(笑)。

    今一番興味があることは、スタートアップと業界団体や行政とのコミュニケーションですね。これまで業界団体や行政と広報的な付き合いをするなかで、スタートアップのコミュニケーションが十分でないことに気づき、もったいないと感じて、コミュニケーションの場を作ったり勉強会を行っています。例えばシェアリング・エコノミーや、フィンテックなど、今までにない新しい概念や仕組みを社会に導入するにあたっては、既存の規制とぶつかったり、社会制度、業界団体と折り合いをつけるために、相互理解や調整交渉などのコミュニケーションが必要になってきます。

    現在は、そのようなテーマを扱うコンサル会社に席を置かせてもらって修行したり、渋谷区のプロジェクトに携わったりしています。at Will Workもその一貫とも言えます。トライセクターによるコミュニケーションや課題解決のサポートや、行政の発信などテーマはいくつかありますが、公共コミュニケーションが面白いですね。

    経営している渋谷のロックバーが、コネクティングの場に。

    池田 実は今、日比谷さんが最も力を入れているのは、ロックバーの経営ともお聞きしたのですが、実際にはどんなことをしているのでしょうか。

    日比谷 昨年10月から渋谷駅近くの雑居ビル4階で、仲間2人と経営しています。元々ロック好きで、2年前から自宅のガレージにターンテーブルを置いて、ホームパーティーをしていたのですが、その後五反田のコワーキングスペース「CONTENTZ」がコワーキングスナックをオープンするにあたって週2回担当するようになり、それから渋谷へと拠点を移しました。

    スタンディングで30人ギリギリ入るスペースですが、メゾネットタイプなので2フロアあり、上を仕事場にして下はバーとして使っています。店は月、水、木、金曜の営業で、広報の勉強会やスタートアップのイベントが終わった後の二次会として人がやって来るなど、サロンになっていますね。運営の3人がいい音を聴きながら知人たちと飲めたらいいというコンセプトで始めた場所なので、知り合いやその知り合いが来店します。出会ってハプニングすると面白いですよ。ちなみに私は人と人をつなげる材料として、どんなことが得意か、またどんなことに困っているかを尋ね、それを元にどんどん人を紹介していきます。つなげた後どうなっているのか追ってみるとさらに面白いと思いますが、そこまではできていません。その場でつながっただけで何か起きるわけではないのですが、後から転職したとか、出資してもらったとか、ポジティブな後日談をきかせてもらってニヤニヤしているような感じです。

    池田 それはまさにエンゲージの理想型で、昔やっていた赤提灯はつぶれないという話に似ていますね。食べログもない頃、小学校の同級生の母親がやっているようなお店に、すごく美味しいわけではないのに誰かに会えるという理由で足が向いてしまう。ママが寝込むと誰かが手伝ったり、材料が足りなくなるとお客さんが買いに行ったりしてね。自分たちがいいと思っている人が来て、いい人を連れてくる、おかしな人が来ない店ができているんですよ。

    NPSスコアで1~6をつけた人は、店舗との間でなんらのかミスマッチを起こしている方が多くいます。飲食業も小売業も無理する必要はないのに、経営規模が大きくなっていくと経営者が売上を気にするようになり、スタッフはここのブランドが好きという純粋な気持ちで最初は働いていたのが、気がつくと売上ばかりをきにする仕事になってしまった。本来は誰もがお客様ではなく、ブランドやサービスを気になっている方や好きなお客様にすすめて、お客様からもよかったと言われる。それが褒め言葉となり、仕事へのやる気や業務改善につながって好循環を生むのです。ネットでものが買える時代だからこそ、こういう商売の仕方を残さないと大事なものが残らなくなりますね。

    日比谷 ロックバーの経営は家賃や仕入れを考慮するとほぼ自転車操業なんですが、ここがなかったら別の店でお金を落として、下手したら今の家賃分以上にお金を使っていたかもしれません(笑)。金を稼げればプロだと知人の経済記者から言われたのですが、経済合理性との両立は厳しいと感じています。土地単価が高いのに、夜9時から店を開けて、昼間は寝かせている状態なので。その時間をギャラリーとかスペース貸しにするのも手かもしれません。

    ママをやらせて欲しい、週2回働きたい、修行したいと言われることもあります。面白いからというより、働き方のひとつとしてとらえているようです。

    池田 働き方がチャンク化することにより、新しい組み上げ方ができる。好きな気持ちで商品やサービスを提供し、これに共感したお客様が購入するというエンゲージをプラットフォームにすれば、いろんな人が働きがいのあることに取り組めて、お客様に喜んでもらいたいという気持ちで働けますね。

    日比谷 社団法人at Will Workがカンファレンスとは別に開催している「Work Story Award」https://award.atwill.work では、いろいろな方々の働き方のストーリーを毎年20個選び、発表していますが、全国で既に色々な働き方の取り組みが実践されています。

    働き方改革で言われているような労働時間や雇用形態の話もさることながら、シェアリングエコノミーをはじめとした新しい働き方の普及によって、どんどん個人が社会に”むき出し”になって経済活動に参加する余地が広がって来ると思います。そうなると、自分で自分の「仕事の満足度」に向き合ったりコントロールする必要が出てくるのではないでしょうか。

    池田 日比谷さん、本日はありがとうございました。短い時間でしたが楽しい時間を過ごせましおた。好きなことを仕事にする素晴らしさについて多くの学びを得ることができました。私もカスタマーサクセスを増やすために、コネクト力をより強くしたいと思います。

    ■日比谷尚武氏プロフィール
    学生時代より、フリーランスとしてWebサイト構築・ストリーミングイベント等の企画運営に携わる。その後、NTTグループにてICカード・電子マネー・システム開発等のプロジェクトに従事。  2003年、株式会社KBMJに入社。取締役として、会社規模が10名から150名に成長する過程で、開発マネジメント・営業・企画・マネジメント全般を担う。  2009年より、Sansanに参画し、マーケティング&広報機能の立ち上げに従事。並行して、OpenNetworkLabの3期生としても活動するなど、各種コミュニティ活動を行う。 現在は、コネクタ/名刺総研所長/Eightエヴァンジェリストとして社外への情報発信を務める。 並行して、マカイラ株式会社 コネクタ兼シニアコンサルタント、株式会社PRTable エバンジェリスト、公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会 広報委員、一般社団法人 at Will Work 理事、ロックバーの経営 なども務める。 趣味は情報収集&タスク整理&野宿&サバイバルゲーム。 『BtoB/IT広報勉強会の主催』 『父親が始めた江戸吉原研究の成果を、ポップに脚色して発信する活動』 『アナログレコードでロックを聴く素晴らしさを啓蒙する活動』 『ベンチャー、BtoB事業社へのPR&マーケ相談にも乗る。』なども行う。

     

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