2017.07.18
ロイヤルティ
ファッションはメインカルチャーではなくなった? ~他のサブカルチャーとの掛け合わせで新しい売り方を
ちょっと昔話をしますが、大学を卒業して洋服の販売員になるまでファッションに興味はありませんでした。ずっと好きだったのは、漫画やアニメ、特撮でした。これはいまだに見続けていますが(笑)。今年も日曜日は朝7時半に起きてキュウレンジャーと仮面ライダーエグゼイドを毎週見ています。
けれども、そんな自分でも学生時代はアニメキャラクターのプリントされたTシャツなんて買ったことも着たこともありませんでした。もちろん、今でもありません。やっぱり「オタク」だと思われたくないという思いがどこかにあるのでしょうね。そういうものを着るのは「重度のオタク」だという認識でした。
目次
ユニクロのアニメキャラクターTシャツのターゲットは誰?
しかし、その認識は5年位前から大きく変わり始めました。まず、ユニクロで「ガンダム」や「あしたのジョー」「ドラゴンボール」「ワンピース」などのアニメキャラクターTシャツが大々的に売られ始めたのです。これは毎年売られています。最初に見たときは驚きました。ユニクロは「オタク」をターゲットにしたのかと。ところが、この認識は間違っていたとそのうちに気付き始めました。
スピンズというヤング向けのブランドが「うる星やつら」のTシャツ類を販売し始めたのです。これも最初に見たときは驚きましたし、そんなものがユニクロはともかくとして、ヤング向けファッションブランドで売れるのかと疑問を持ちました。それはどうやら単なる杞憂だったようです。その後、アニメや漫画とファッションブランドとのコラボは増える一方になりました。
その後、伊勢丹とセーラームーン、ヨウジヤマモトとサイボーグ009など、一流百貨店、高級ブランドまでもがアニメや漫画とのコラボ商品の発売や、コラボイベントの開催を行っています。これは本当に驚くべき現象で、20年前にはとても考えられなかった状況です。今の若い人にとっては当たり前なのかもしれませんが。
いつの間にか、アニメ・漫画は「オタク」のためだけのものではなく、万人が共有し得る文化になっていたといえます。
アニメや漫画は老若男女を問わないメインカルチャー化している
3年位前から月に何度かファッション専門学校で講義をしています。今の学生とは30歳近く年齢が開いていますから、カルチャーショックを受けることもなかなか多くあります。その中でとくに驚かされるのが、知っているファッションブランドやアパレル企業がまったく異なる点です。ところが、アニメや漫画だと30歳の年の差は関係なく、共通の話題にすることができるのです。ドラゴンボール、ワンピース、北斗の拳あたりはとくに共通の話題に適しています。
こうした状況を見ていると、アニメ・漫画はかつて「サブカルチャー」と呼ばれていましたが、今ではすっかり老若男女を問わないメインカルチャーに昇格したのだということがよくわかります。
そういえば、つい先日も、ベイシングエイプがアラレちゃんとのコラボ商品の発売を発表していました。アニメ・漫画のメインカルチャーぶりは本当に凄まじいといえます。
大衆のファッションへの注目度は落ちている
一方、我らがファッションはどうでしょうか?たしかに2005年ごろまでは大ヒット商品が定期的に生まれており、メインカルチャーだったといえます。97年ごろ、安室奈美恵さんが「バーバリー・ブルーレーベル」のチェック柄のミニスカートを穿いて「アムラー」の大ブームを巻き起こしたことがありましたが、そんな大ヒット商品は2010年代には生まれていません。いかに大衆のファッションへの注目度が落ちているかがわかります。
多くのファッションブランドやアパレル企業が苦戦を続けており、その要因はさまざまあると考えられます。その一つとして、多くのブランドやアパレルが、いまだに「ファッションはメインカルチャー」と考えているところにあるのではないでしょうか? かつて「サブカルチャー」と呼ばれた漫画やアニメと、ファッションの立場は入れ替わってしまったと考えれば、新しい売り方ができるのではないかと思っています。
バイク×ファッションがコンセプトの「アイアンハート」事例
アイアンハートというジーンズカジュアルブランドのショップを取材したときに強くそう感じました。
バイク乗りに向けたオリジナル企画のジーンズカジュアルアイテムを提案するブランドで、現在、3店舗の直営店を持っています。バイク乗りに向けたというコンセプトに沿って、非常に頑丈さが重視されており、すべての商品に分厚い生地が使われています。とくにジーンズは21オンスという分厚いデニム生地(通常のジーンズは14オンスのデニム生地)が使われており、2万円を越える高価格ですが、裾上げ以外の破れやほつれに対しても永久に無料で補修するというサービスが特典としてつけられています。
こういう高額品の売り方は他社でも見習うべき部分があるのではないでしょうか。ブルゾンやコート類は撥水加工が施されており、雨でもバイクに乗れるようになっています。現在の売上高は7億円強でそのうちの約半分が海外向けの売上高となっています。
アイアンハートの原木真一社長は30年以上をアパレル業界で過ごしてきたベテランで、「2000年を越えたくらいからファッションは明らかにメインカルチャーではなくなってしまった。それまでのメインカルチャーとしての売り方では消費者に買ってもらえなくなったと感じたので、2003年にアイアンハートを始める際に、ファッション性一辺倒ではなく、何か他の要素を加えて『スタイル』として販売することを考えたのです。それが学生時代から愛好していた大型バイクだったのです」とブランド開始時の動機を語ってくれました。
「サブカルチャーとしてのバイクと、サブカルチャーになったファッションを掛け合わせることである程度の需要を喚起できるのではないかと思いました」と原木社長。
サブカルチャーが持つ顧客創出の可能性を活用しよう
単なる「ファッション性」や「トレンド性」だけでは洋服が売れないのは皆さんもすでに痛感しておられると思います。もう「アムラー」がバーバリー・ブルーレーベルを争って買っていた時代には後戻りできません。ファッションをサブカルチャーの1つとしてとらえ、他のサブカルチャーと掛け合わせることで顧客を創出してきたアイアンハートの売り方には参考になるべき部分があるのではないでしょうか。
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