2015.06.12
従業員エンゲージメント
創業者の言葉から生まれた基本バリュー、「やってみなはれ」精神が強く根付くサントリー
サントリーホールディングス(以下サントリー)と言えば、「サントリーウーロン茶」、「伊右衛門」、「伊右衛門 特茶」、「ザ・プレミアム・モルツ」、「オールフリー」、「ほろよい」、「-196℃」、「山崎」、「響」など、各ジャンルで大ヒット商品を持つ企業。飲料のイメージが強いですが、健康食品や化粧品などにも力を入れています。
2013年7月には、株式非上場の“社是”を覆し、世界各国のブランド買収における資金調達のため、主力子会社のサントリー食品インターナショナルを東証1部に上場しました。これまでの非上場ならではの自由度の高い企業文化を保つことが出来るのか、と気になる方も多いと思いますが、同社が多くヒット商品を生み出し、大型のM&Aを重ねるその裏には、同社の基本バリュー「やってみなはれ」が大きく関係しているようです。
「やってみなはれ」DNAの源とは?
サントリーは、1899年(明治32年)2月に、20歳の鳥井信治郎氏が、葡萄酒の製造販売を目的とした鳥井商店を大阪市西区で創業したところからはじまりました。鳥居商店が当初力を入れたのが、赤玉ポートワインの製造販売。サントリーと言うのは赤玉が意味する「太陽(サン)」と店名の「鳥井(トリー)」を合わせた名前で、ブランド名としてウィスキーやビールに付けられました。サントリーが今の社名になったのは、1963年(昭和38年)にサントリービールが発売された年でした。
創業者の鳥井氏は、どんな苦境に立たされても自分自身と商品への確信を捨てることなく、どんなにたたかれてもあきらめずに挑戦を続ける人物だったそう。そんな彼がことごとく発していたのが「やってみなはれ」という言葉。
日本の洋酒文化を拓いた鳥井氏のチャレンジ精神を受け継ぎ、ビールや清涼飲料、健康食品などのさまざまな事業分野を開拓してきたサントリーの精神は、現状に甘んじることなく、新しいことへの挑戦を続ける原動力に。「結果を怖れてやらないこと」を悪とし、「なさざること」を罪と問う、それがサントリーの社風として、基本バリューとして受け継がれているようです。
「やってみなはれ」精神ここにあり!
やってみなはれ精神が生み出した事業は、サントリーの歴史のあちらこちらに見ることができます。
例えば今こそ黒字化したビール事業、1963年に立ち上げてから45年間赤字でしたが、2003年に発売した「ザ・プレミアム・モルツ(プレモル)」で提案した「ビールの味をじっくり楽しむ」という飲み方を新ジャンル(第3のビール)商品にもうまく応用したことで、2008年に黒字化を果たしました。
ちなみにこのビール事業を立ち上げの際、2代目社長の佐治敬三氏がこのビール事業参入について創業者鳥井氏に報告したところ、「やってみなはれ」という言葉をかけられたそう。これは失敗を恐れず、行動し、学びながら改善していけばいい、という考え方に基づいたもの。
また今すっかり人気商品として定着したウイスキーのハイボール戦略もいい例です。若者や女性にとっては縁遠い飲み物で、長期低迷状態に入っていたウイスキー。彼らに気軽に飲んでもらえるように「ハイボール」という飲み方を提案しようとしたものの、最初は失敗の連続だったそう。でも試行錯誤を繰り返し、地道なプロモーションで徐々に浸透させ、角ハイボールのCMに小雪を起用することで「さわやかで飲みやすい、若者や女性でも楽しめるお酒」というイメージに変換することに成功。カロリー控えめで、プリン体含有量もほぼゼロ、アルコール度数も低いという点や、食中酒としての提案が広く受け入れられた理由のようです。(こちらもあわせてどうぞ→「ハイボール人気の次はウイスキー人気? 顧客ロイヤリティ向上ための巧みな仕掛けとは?!」)
こうした挑戦と努力は、社員一人ひとりが「やってみなはれ」の精神を大切にして仕事をしていることの表れのように思います。サントリーでは若いうちから大きな仕事を任せられると言いますが、そうして挑戦できるのも「やってみなはれ」精神の表れです。「やってみなはれ」精神を大切にする社風とは、失敗をマイナスと捉えず、挑戦を奨励し、何でも言い合える自由な風土があるということ。イノベーションを起こそうとする社員を守る企業文化があるからこそ、長期的な挑戦も可能となるのではないでしょうか。
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