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    2026.09.27 経営

    【コラム】平均点は、現場のどこにも存在しませんでした。その“常識”、データで確かめました。

    平均点は、現場のどこにも存在しませんでした。

    前回の最後に予告した、拠点間の格差の話です。

    これまでの体験データ活用における気付きを、連載を始めてこれで3回目です。
    いただく反応に共通したパターンがあることに気づきました。「うちも測ってはいるんです」という前置きから始まる、という点です。

    測っていないわけではない。むしろ、真面目に測っている。集計もしている。会議でも報告されている。それでも、その数字が現場をどう良くしたのかと聞かれると、なかなかうまく活用できていないと言われることが多いです。

    今回は、その理由のかなりの部分を占めているであろう話を扱います。

    ――――

    先に、この記事の芯を書いておきます。

    90拠店舗をお持ちのチェーンストアで、拠点ごとにNPSで並べ直したところ、最も高い拠点が”+81.3″、最も低い拠点が”−50.0″でした。

    差は”131ポイント”です。すごい差で、自分も驚きました。(当社史上過去最高です。)

    図1|90拠点を、NPSの高い順に並べ替えた

    同じ看板を掲げ、同じマニュアルを使い、同じ研修を受けているはずの拠点間で、これだけの開きがありました。そして当然ながら、この事実は全社平均を見ているかぎり、一度も視界に入ってきませんでした。

    「全社平均で管理する」という当たり前

    まず、なぜ私たちが平均値を見るのかを整理しておきます。

    理由は単純で、”比較しやすいから”です。前年と比べる、他社と比べる、目標と比べる。どれも一つの数字でなければできません。経営会議に90本の棒グラフを持ち込んでも、議論にはなりません。

    だから平均値には、確かな役割があります。全体が上向いているか下向いているか、その方向だけは掴めます。

    問題は、そこから先です。方向が分かっても、”どこに手を打てばいいか”は分かりません。そして多くの企業が、方向を掴んだ時点で分析を止めてしまいます。

    ――――

    平均値は、二極を隠します

    平均値の厄介なところは、「そこそこの数字」を返してくることです。

    たとえば、+81.3の拠点と−50.0の拠点が一つずつあったとします。平均は+15.65。悪くない数字に見えます。実際には片方がかなり良い店舗として評価いただき、もう片方は多くの問題をお客様に感じさせているにもかかわらず、集計表の上では「まずまず」と表示される。

    これは、第1号で書いた「推奨度の社交辞令」や、第2号で書いた「常連の沈黙」と、同じ構造をしています。

    いずれも、”見えているものが実態を覆い隠している”という話です。指標が間違っているのではなく、見方が粗いために、現場で起きていることが数字の下に沈んでしまっている。

    平均は、しばしば二極を隠します。そして隠された二極のうち、経営が本当に知るべきなのは、下側のほうです。

    もう少し踏み込むと、平均値には”動きにくい”という性質もあります。90拠点の平均を1ポイント動かすには、全拠点が一斉に良くなるか、あるいは一部が劇的に変わるかのどちらかが必要です。前者はまず起きません。後者は起きても、平均への影響は小さく見えます。

    だから、現場で本当に良い変化が起きていても、全社平均はほとんど動きません。すると経営側は「施策が効いていない」と判断し、現場は「あれだけやったのに評価されない」と感じる。両者が同時に間違った結論に達します。

    平均値で管理するかぎり、成功も失敗も見えにくいのです。

    図2|平均値は、二極を隠します

    90拠点を、拠点ごとに並べ直した

    そこで、全社平均をいったん脇に置いて、拠点別にNPSを算出しました。

    対象は、これまでと同じ全国90拠点のヘルスケアサービスチェーン。
    有効回答 約4,100件です。

    結果はこうでした。

    最も高い拠点:+81.3 最も低い拠点:−50.0

    差は131ポイント。

    +81.3というのは、回答者のほとんどが推奨者という状態です。一方の−50.0は、推奨者より批判者が圧倒的に多い。同じチェーンの中に、この2つが同居していました。

    そして、もう一つ驚いたことがあります。

    全社の体験スコア(10点満点)を見ると、空間9.02、接遇8.96、問診8.99、技術8.75。”全項目が高評価”だったのです。

    平均だけを見れば、このチェーンは「よくやっている」と評価されます。実際、報告書もそう書かれていたはずです。
    それでも、同じ期間に売上が減った拠点は6割強ありました。

    なぜ10点満点の評価が軒並み8点台後半に集まるのか。
    これは私たちが多くの現場で繰り返し見てきた現象で、理由はいくつかあります。

    ひとつは、”答える側が気を遣う”こと。施術直後にタブレットを渡されて、目の前にスタッフがいる状況で、6点や7点をつけるのは相当な勇気が要ります。

    もうひとつは、”項目が抽象的すぎる”こと。「接遇はいかがでしたか」と聞かれても、特に不快なことがなければ9点をつけます。悪くなかった、という意味での9点です。

    つまり、体験スコアの高さは「とても良かった」の裏付けにはなりません。「特に悪くなかった」の集積である可能性が高い。そして、特に悪くない体験からは、再訪は生まれません。

    図3|全項目が高評価。それでも6割強が減収でした

    評価の高い店と、売れている店は、別でした

    さらに一歩進めて、拠点をNPSと年間売上の2軸で4つに分類してみました。

    両方が高い「スター」は、13拠点。 両方が低い「優先改善」は、11拠点。 そして残りは、”どちらか一方だけが高い”拠点でした。

    ここが実務的には一番重要だと思っています。

    評価が高いのに売れていない拠点は、商圏や価格、あるいは稼働の設計に問題がある可能性があります。逆に、売れているのに評価が低い拠点は、いま数字が出ているだけで、”これから落ちていく”拠点です。

    全社平均で管理しているかぎり、この2種類の拠点は同じ扱いになります。けれど、打つべき手はまったく違います。

    前者に接遇研修をしても効きません。後者を「好調店」として放置すれば、来期に崩れます。

    図4|評価の高い店と、売れている店は、別でした

    なぜ、同じ看板でここまで差がつくのか

    131ポイントという数字を見たとき、最初に浮かんだ疑問はこれでした。

    自由記述と拠点情報を突き合わせて見えてきたのは、差の多くが”設備でも立地でもない”ということでした。もちろん商圏の影響はあります。
    ただ、同じような商圏の拠点同士でも、大きく開いているケースが少なくありませんでした。

    差がついていたのは、もっと地味なところです。

    説明の仕方が拠点ごとに違う。次回の案内をする拠点としない拠点がある。前回の内容を引き継いでいる拠点と、毎回ゼロから始める拠点がある。

    第2号で書いた「2回目の設計の空白」が、拠点ごとにまちまちに埋められていた、ということです。埋めている拠点は+80台まで伸び、埋めていない拠点はマイナス圏に沈む。

    マニュアルには「丁寧に対応する」と書いてあっても、何をどの順番でやるかまでは書かれていない。その余白の埋め方が、拠点の裁量に委ねられていました。

    ――――

    でも、平均値をやめろという話ではありません

    ここも誤解されたくないので、書いておきます。

    平均値には役割があります。全体の方向を掴むこと、経年で比較すること、他社と並べること。これらは分布では代替できません。経営会議に90本の棒グラフを持ち込めないのも事実です。

    問題は、平均値”だけ”で管理していることです。

    私たちがおすすめしているのは、報告フォーマットに一行加えることです。全社平均の隣に、「最高値」「最低値」「その差」を並べる。それだけで、会議の空気が変わります。

    「平均は+12.4です」という報告と、「平均は+12.4、最高+81.3、最低−50.0、差131ポイントです」という報告は、同じデータから作られていながら、引き出される議論がまったく違います。後者には、次に何を調べるべきかが含まれているからです。

    分布を見ることは、平均を捨てることではありません。平均に”幅”を添えるだけです。

    では、現場では何が変わるのか

    この連載で繰り返し書いていることですが、指標の価値は点数ではなく、”会議の問いが変わること”にあります。

    全社平均で管理していたころの議題は、「今月は0.3ポイント下がりました」でした。全社の話なので、誰の話でもない。結果として、全員が少しずつ反省して終わります。

    拠点別に並べ替えると、議題が変わります。「上位5拠点は何をしているか」「下位5拠点で共通して欠けているものは何か」「上位のやり方を、そのまま下位に移植できるか」。

    ここで重要なのは、”下位を責めないこと”です。131ポイントの差は、個人の能力差ではなく設計の有無から生まれています。責めると現場は数字を隠すようになり、翌期から正確なデータが取れなくなります。

    見るべきは「誰が悪いか」ではなく、「上位拠点が無意識にやっていることを、どう仕組みに翻訳するか」です。そして、それができたとき、はじめて全社平均が上がります。平均を目標にするのではなく、分布を動かした結果として平均が動く。順番が逆なのです。

    ――――

    明日からできること

    まず、”拠点別に並べ替えて”ください。すでに集計されているデータがあれば、それを拠点ごとにソートするだけです。新しい調査は必要ありません。多くの場合、この作業に15分もかかりません。

    次に、”最高と最低の差”を確認してください。差が50ポイントを超えていたら、全社平均で管理することの意味はほぼ失われています。参考値として、今回のデータでは131ポイントでした。

    そして、”NPSと売上を2軸で並べて”ください。4象限のうち、「売れているが評価が低い」拠点を最優先で見てください。そこを以下にフォローするかが重要なポイントです。
    現場の店長・マネジャー、SVだけでは、荷が重い状態ではないかと思います。。
    売上向上の前に、NPSなど顧客体験を上げられるようなサポートが必要でしょう。

    そして、”上位拠点に話を聞いて”ください。数字が高い理由を、本人たちは自覚していないことがほとんどです。「普通にやっているだけです」と言われます。その「普通」の中身を分解することが、そのまま横展開の設計図になります。

    ――――

    拠点別のデータを初めてお見せしたとき、多くの経営者の方が同じ反応をされます。

    「この拠点がこんなに低いとは思わなかった。」

    現場を回っておられる方ほど、驚かれます。月次の報告では上がってこないからです。そして、上がってこない理由もまた単純で、”平均に埋もれていたから”なのです。

    次回は、視点を顧客から従業員に移します。同じように「分けて測る」ことをしたときに、社内で何が起きていたのかという話です。冷めていたのは、必ずしも若手やアルバイトの方ではありませんでした。

    自社で試してみたい方へ

    ① 再来意欲 設問テンプレート(無料・PDF/全7ページ) 必須設問3問と、業種別の推奨設問を収録しています。治療院・クリニック/小売・スーパー/飲食・宿泊/BtoBサービスの4パターン。拠点別に見るときの最小n数の目安も記載しています。 → ダウンロードはこちら(メールアドレスのみでお受け取りいただけます)

    ② CX-EX 現状診断(無料・オンライン30分) すでに調査を実施されている場合は、その集計データをお持ちください。拠点別に並べ替えたときに何が見えるかを、その場で一緒に確認します。売り込みの時間にはしませんので、その点はご安心ください。 → 日程調整はこちら

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    私たちトータル・エンゲージメント・グループは、2010年から中堅・中小のサービス業を中心に、CX-EXの「見える化」と、その先の仕組み化を支援しています。延べ約200社・420案件・20業種を超える現場で測り続けてきたデータを、こうした形で少しずつ公開していきます。

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    調査概要 ヘルスケアサービスチェーン(全国90拠点)/CX調査 有効回答 約4,100件/2022年4月分析/売上比較期間 2021年3月〜2022年2月(売上データを突合できた90拠点を対象)。拠点別NPSは拠点単位の集計値、体験スコアは10点法の全社平均です。数値はすべて実測値および実測値からの算出値です。クライアント名は非開示とし、業種・規模のみ記載しています。

    ※ 案件数・社数は、同一企業での複数年・複数拠点・複数調査種別を累計して計上しています。2020年以前の数値は当時の記録にもとづきます。

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    トータルエンゲージメントグループでは、これまで延べ100社以上15,000店舗以上のアパレル・小売流通・飲食宿泊から金融、行政などB2C事業からSaaSやメーカーのようなB2B事業など、様々な業種での支援実績がございます。
    CXにおける改善をツール提供だけでなく、全体の戦略をもとに策定・実施まで一気通貫でサポートいたします。まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください!

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