2026.02.22
体験価値
【コラム】ミラノ冬季五輪が示す「体験価値」の真髄
目次
ミラノ五輪が教えてくれたこと──感動が先、マーケットはあと
ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックが終了しました。
冬季スポーツの競技人口は、決して大きくありません。
スケート関連の登録競技者数は約7,600人(日本スケート連盟・2019年)。
愛好家を含めても、数十万人規模と言われています。
サッカー408万人、水泳503万人、卓球387万人と比較すれば、
マーケット規模としては圧倒的に小さい。
それでも、冬季五輪は大きな感動を生み出します。
なぜでしょうか。
人は“競技人口”ではなく“感情”で動く
女子フィギュアスケート。
氷上の演技は、ジャンプの成功率だけで評価されているわけではありません。
選手がどんな年月をかけてきたのか。
どんな怪我を乗り越えたのか。
どんな思いで音楽を選んだのか。
私たちは、その背景を想像しながら見ています。
感動は、結果の瞬間だけではありません。
女子フィギュア金メダリストのアリサ・リュウが中井亜美の銅メダル確定の瞬間、抱き合って喜んでいるシーンなどは記録でもありません。
その瞬間の共感が、心を動かしているのです。
女子スピードスケートも同じです。
1500mの高木美帆は、「最後だと思って…」、しかし結果は6位。そrでも4年間で「やり残したことない」と言える選手の心境。
0.01秒を削るために、何年も積み上げてきた努力。
「人はここまで自分を高められるのか」という驚き。
速さそのものよりも、その挑戦の姿勢が感情を揺さぶります。
感動の手前にある「体験価値」
ここで重要なのは、感動の正体です。
感動は偶然ではありません。
私たちは、
選手の緊張を感じ、
息づかいを想像し、
自分もその場にいるように錯覚する。
つまり、
“擬似参加”している。または“共感”している。
これが体験価値です。
実際にスケートを滑ったことがなくても、
心の中ではリンクに立っている。
この“参加・共感”こそが、
競技の価値を拡張していると思います。
体験が競技人口を増やす
この流れを冷静に見ると、順番が見えてきます。
感情が動く
↓
体験価値が生まれる
↓
「やってみたい」が生まれる
↓
競技人口が増える(実際に行うための障害は多くあることが課題だと思っています。)
↓
マーケットが広がる
最初にあるのは、規模ではありません。
感動です。
そしてその感動の土台にあるのが、
体験設計なのです。
スノーボードが示す構造
スノーボードの世界では、
新しい技が生まれ、それがすぐに共有されます。
観る側は進化の過程をリアルタイムで体験する。
「あの技を自分もやってみたい」
この気持ちが、競技人口を押し上げ、
結果として市場を拡張してきました。
自分も初めてスノーボードを行ったときは、初日から滑ることが出来ました。スキーは滑れると言うまでには、数日はかかった気がしています。いかに未経験者への体験機会を提供できるのか、楽しみを伝えられるのかが重要にはなります。
市場があるから競技が盛り上がるのではない。
体験があるから市場が生まれる。
この順番を、冬季五輪は何度も見せてくれます。
マーケットは“あと”からついてくる
スポンサーも放映権も、
本質的には競技人口に投資しているのではありません。
感情の総量に投資している。
どれだけの人が心を動かされたか。
どれだけの人が応援したくなったか。
その総和が、経済価値になります。
だからこそ、
マーケットの大きさを嘆く前に、
感情を動かせているかを問うべきなのです。
ビジネスへの示唆
企業も同じです。
顧客数が多いかどうかよりも、
どれだけ“参加感”を生み出せているか。
どれだけ「自分ごと」にできているか。
規模を追いかける前に、
体験を設計できているか。
感動 → 体験価値 → 関与人口 → 市場
この順番を間違えなければ、
規模は後からついてくるのではないでしょうか。
スポーツだけではなく、地域再生や新店舗オープン、新業態開発なども同じではないでしょうか。
ミラノ五輪が残した問い
冬季スポーツは、決して巨大市場ではありません。
それでも、世界を動かす。
それは、
体験が先にあり、
感情が市場をつくっているからです。
人を動かすのは、スペックではない。
記録でもない。
心が動く瞬間です。
ミラノ五輪は、
「体験価値が市場を生む」
というシンプルな構造を、
改めて私たちに示してくれました。
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