2016.01.08
その他
店頭で見せてウェブで売る ショールーミングを逆手に取ったヨドバシカメラ
成長続くインターネット通販市場
衣料品業界は実店舗での売上高は伸び悩んでいますが、インターネット通販の総額は伸びています。昨年5月に経産省が発表した2014年のEC市場規模は、2013年よりも1兆6000億円強も増えて、12兆7970億円 となりました。
ここには物販系以外のサービス分野やデジタル分野も含まれていますが、物販系だけでも6兆8,042億円で伸び率13.5% と好調です。当然ファッション以外の物販も含まれていますが、ファッション製品も全体的には伸びていると考えられます。今後は如何にインターネット通販を活用するかがファッション業界でも大きな課題の一つであると考えられています。
しかし、その一方で、インターネット通販の発達に対して「ショールーミング」を異様に警戒する風潮も生まれており、なかなか腰が重いアパレル企業、ブランドが多いのも実情です。ショールーミングとは、“実店舗をショールームと消費者が見立てて、店頭に並んでいる商品をウェブ検索し、最安値で販売しているウェブショップで購入する”という行動のことです。
インターネットが発達するにつれ、我が国でも確実にこの行動は消費者間に広まっていると言われています。多くの業者は消費者のこの行動を防ごうと躍起になっていますが、果たしてそれはビジネスにおいて適切な処置なのでしょうか?
ショールーミングを活用して売上高2000億円突破
物販系のインターネット通販でもっとも強いといわれているのがアマゾンですが、伸び率から注目されているのが、ヨドバシカメラの通販サイトです。2014年度の売上高はなんと前年比50%増で2000億円 を突破しました。
ヨドバシカメラの通販サイトは「ショールーミング」を逆手にとって、店頭の商品を使って自社のサイトに呼び込むようにしています。店舗の商品についている「バーコード値札」です。全商品の値札についているバーコードを専用アプリで読み取ると、その場で「ヨドバシ」の該当ページへジャンプします。キャンペーンや特売品などを除けば、店頭もネットも価格は同じで、ポイントも共通化されていて利便性があります。また、店舗の販売実績としてカウントされるので、店舗からの不満も出ていないそうです。実店舗で売れてもウェブショップで売れても本社にとっては同じ売上高です。
小売業でよくあるのが自社内の顧客争奪戦です。個人ないし店舗にノルマがあるため、自分(自店)のお客を他店に譲らないことがしばしばあります。そういうセグメント意識をなくしたことがヨドバシカメラのウェブ通販には良い効果となって表れているといえます。
全社的に見ればどちらで売れても本来は構わないわけです。この割り切りがヨドバシカメラの成長を支えていると言えます。
そうは言っても、ヨドバシカメラのサイトもまだまだ改良の余地は数多くあると思います。ヨドバシカメラの通販サイト躍進という記事を読んで、通販サイトに飛んでみたのですがアマゾンよりも高い商品が結構見受けられました。また知人によると、品ぞろえは今でもアマゾンの方が豊富だそうです。この2点をいかに修正できるかでヨドバシカメラのウェブ通販の成長性が大きく左右されるのではないかと思います。
それでもなぜ通販サイトの売上高が急成長したのかという疑問を呈されることがありますが、個人的な意見で言うと、ウェブの場合は展示面積に限りがありません。いわば無限に商品を陳列できるのです。急成長中のピーク時に、レディースファッションの通販サイト「夢展望」の岡隆宏社長はこうおっしゃっていました。「リアル店舗は面積に限りがあるので、陳列できる商品に限りがありますが、ウェブ店舗は面積に制限がありません。無限に陳列できるのです。そこを意識して陳列量を増やしたことが支持されました」と。リアル店舗では陳列されていない(できない)商品・品切れの商品をウェブ店舗で見つけることができるから利用者が増えたと考えられます。
ヨドバシカメラの店頭でバーコードをスマホで読み取ってジャンプしたサイトから、またわざわざアマゾンへさらにジャンプするのを面倒だと感じる人は多いのではないかと推測します。
しかし、ショールーミングを恐れるあまり、インターネットを敵視する人が少なからず存在するファッション業界よりも先見性があり、発想にも柔軟性があるといえるのではないでしょうか。
実店舗とウェブ販売の組み合わせに活路を
試着する、商品の材質の触感を確かめる、これらはインターネット通販ではできないことです。これができるのが実店舗の強みと言えます。一方、インターネット通販は、回線さえつながっていればいつでもどこでも買い物ができます。実店舗では営業外時間である早朝や深夜でも自宅から買い物ができます。この2つを上手く組み合わせれば、実店舗の売上高減収を補えるであろうことは容易に想像できます。実店舗で商品を見せてウェブサイトで商品を売るというヨドバシカメラの逆転の発想はアパレル業界でも活用できるのではないでしょうか。
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