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    2017.07.05 ロイヤルティ
    「接客不要バッグ」は顧客満足を高めるか?

    photo by Sole Treadmill?

    店に入って、販売員に声をかけられるのが苦手だという人も多いのではないでしょうか。販売員をやっていた自分も声をかけられるのは苦手です。

    入ってきたときに「いらっしゃいませ」か「こんにちは」(GAP風)か、くらいは声をかけてほしいと思いますが、あとは放っておいてほしいと思います。だからほとんどセルフ対応みたいな売り方をしているユニクロ、ジーユー、無印良品、GAPなどの店舗の方が居心地は良いと感じます。

    「声かけ」にある消費者と販売側のギャップとは

    逆に、大手セレクトショップや百貨店のインショップに入店すると、こちらはぜんぜん買う気がないのに、ガンガンしゃべりかけられることがあり、ちょっと「鬱陶しいな」と感じることがときどきあります。商品説明や素材説明が初心者レベルだった場合は、こちらがレクチャーしてやろうかとさえ思います。(しませんけど)

    お買い物に慣れている女性はそこまで苦手意識のある人は少ないかもしれませんが、あまり買い物に慣れていない男性は苦手、鬱陶しいと感じる人も多いのではないでしょうか。

    一 方、声掛けをするのとしないのとでは、経験上売れ行きが大きく異なります。低価格品なら説明なしでも価格だけで売れますが、ある水準以上の価格になると説明なしではなかなか売れにくくなります。ですから、声掛けは必須です。その上、多くのチェーン店では本部からの売り上げノルマも厳しく要求されており、必然的に声をかけざるを得なくなります。

    ここに消費者と販売側の矛盾するそれぞれの志向が対立することになります。

    少し見方を変えてみると、声を掛けても売れ行きが芳しくないというアパレル業界全体の課題もあります。おそらく多くのショップで販売員はこれまで通り、もしかしたらこれまで以上に積極的に声を掛けていると思いますが、それでも多くのショップ、ブランドでは売上高が前年実績を下回っています。

    アーバンリサーチの「声かけ不要ショッピングバッグ」への賛否

    そういう環境と、消費者からの要望とが相まって、先日、アーバンリサーチで「声かけ不要ショッピングバッグ」が発表されました。店内に備えつけてあるそのショッピングバッグを持っていると販売員に対して「声かけ不要」の目印になるというものです。

    これに対して、賛否両論の声が聞こえてくるが、どちらかというと「賛成」の声が多いように感じられる。それだけ消費者にとっても販売員にとっても「声掛け」は大きな負担だったということだろう。

    一方で反発の声もある。といってもこの反発はショッピングバッグに対するものではなく、それを指示してきた本部に対するものです。

    まとめると、「本部・本社が今まで執拗に売り上げノルマを課してきたから、販売員としてはそれを達成するために、嫌でも声掛けをしてきたのに、本部・本社はそれに対しての説明はきちんとしたのか?」というものです。こちらの言い分もわからないではありません。確かに販売員を経験したうえで言わせてもらいますと、本部・本社、または店長あたりからは、「売り上げを作るためには積極的に声をかけなさい」という指導を受けたことがあり、それは多くのブランドで共通しているのではないかと思います。

    個人的には、この取り組みはそれほど悪いこととは思えません。やってみる価値はあるでしょう。しかし、買う気がなくどんな商品があるのかを見に入っただけの場合でも、逆にショッピングバッグを持たなくてはならないというのはどうにも変な感じがします。もともと買う気がないのに、買う気がないからこそ声を掛けられたくないために、ショッピングバッグを持つというのはなんだかおかしな光景だと感じます。逆に買う気があって接客OKの人だけがバッグを持つという方が分かりやすいのかもしれません。

    店・ブランド側の販売員へのスタッフ教育の在り方が問われている

    今回の取り組みが成功しようが失敗しようが、今後、店頭での販売スタイルというのは見直されることになると思います。

    もしかしたら、接客の価値を消費者側が感じるようになるかもしれませんし、その逆で接客はやっぱり不要だということになるかもしれません。

    最近、国内ブランドや国産品を売りにする店がチラホラと見受けられるようになりました。こういう店の多くは、製法や製造地についての知識を接客トークとして用いる販売員がいます。そのことについては反対する理由もありませんし、むしろ喜ばしいことではないかと思うのですが、最大の売りである「知識」が浅くて薄っぺらいケースが少なくありません。

    先日、知り合いがそういう店に行ったところ、デニム生地についての講釈が始まったそうです。そこで、知り合いが意地悪く、知っていながら「ロープ染色」について尋ねたところ、その販売員は無言で立ち去ったそうです。デニム生地を少しでもかじったことのある人なら「ロープ染色」は基本中の基本です。この染色方法なしではデニム生地の紺色は染められません。それを知らないという販売員の知識の浅さが噴飯物ですが、逆に店側の社員教育の水準も疑われてしまいます

    一方で、低価格店でも、オバちゃんのお客が「あの販売員さんが選んでくれる服はいつもカッコイイ」といって、定期的に通い詰める場合もあります。これなどは販売員が店の価値を高めている一例であり、むしろ、その販売員の接客はありがたがられているといえます。

    結局のところ、接客不要バッグの導入は、販売員の在り方と、店・ブランド側の販売員へのスタッフ教育の在り方が問われているといえるのではないでしょうか。販売員はもちろんのこと、店・ブランド側ももう一度、考え直してみる良い機会なのではないかと思います。

    SHAR

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