2013.10.09
顧客エンゲージメント
顧客ロイヤルティ、顧客エンゲージメントを強化できるコーポレートサイトとは?“Coca Cola Journey”の挑戦。
今年(2013年)6月25日に開設された日本コカ・コーラ株式会社の“Coca Cola Journey”は、自社や自社製品のコンテンツを伝えるだけでなく、ストーリー、すなわち「物語」を伝えることを通じて、顧客エンゲージメントを強化しようとしています。
新装なった本サイトの最大の特徴は、「ストーリー」コーナーのコンテンツです。
2013年9月現在において、以下のようなコンテンツがアップされています。
・Coca-Cola ADventure
・三浦知良 独占インタビュー「46歳、現役の流儀」
・ナガオカケンメイ語る、ルックコーラグラスの魅力
・大学生の社会科見学「コカ・コーラの製造ラインを見学してみた」
・村上萌のハピネスのある食卓
・米倉誠一郎が語る「ピークシフト自販機とイノベーション」
・SNAP!SNAP!SNAP!(Journey編集部によるフォト企画)
なかなか多様で魅力的なコンテンツが並んでいますね。
こうした記事の取材・執筆には、村上萌氏(ライフスタイルプロデューサー)、星野一樹氏(編集者)、平野紗季子(フードブロガー/ライター)、河尻亨一氏(元「広告批評」編集長/東北芸工大客員教授)、山田精機氏(ノンフィクションライター)らが参画。パワーブランド、コカ・コーラにふさわしいクオリティの高いコンテンツに仕上がっています。
企業が、ブランドコミュニティサイトなどを通じて企業情報や製品情報以外の、いわゆる「読み物」系コンテンツを発信することは多いですが、コーポレートサイトにおいて「読み物」系コンテンツを前面に出してくるスタイルはめったにありません。日本コカ・コーラ社にとっても初めての取り組みだそうです。
同社によれば、新コーポレートサイトの特徴は以下の3つ。
・ウェブマガジン型コンテンツ「コカ・コーラ ストーリー」の展開
・グローバルとの連携による「コカ・コーラ ストーリー」の海外への発信
・ソーシャルメディアアカウント(Facebook/Twitterなど)との連携
そして、最大の狙いは、消費者との「会話」につながることです。
従来のコーポレートサイトは、企業情報、製品情報、IR情報など、どれも基本的には情報を発信、伝達するだけのもの。しかも、その多くは「事実(facts)」でした。すなわち、企業の「思想」、「思い」、「意見」といったものがあまり含まれていなかったため、会話の対象とはなりにくかったのです。
インターネットは「企業と消費者、顧客との双方向の会話、コミュニケーションが可能なツール」であるということは以前から理解されていたのですが、実際にこのツールを活かすコンテンツや仕組みに乗り出す企業は多くはありませんでしたよね。
しかし、近年はソーシャルメディアの浸透によって、以前よりもより便利に簡単に双方向コミュニケーションができる環境が整いました。そこで、コカ・コーラ社では、企業としての思いをダイナミックなストーリーテリングによって語ること、そして、ソーシャルメディアとの連動を通じて、本格的な消費者との対話に取り組み始めたと言えるでしょう。
日本コカ・コーラのサイトは、実は米国本社が昨年11月にリニューアルしたサイトのコンセプトを踏襲したものです。アメリカのサイトは明確に「Digital Magazine」と謳っており、よりストーリーテリングをメインに置いたものとなっています。
さて、Coca Cola Journneyが注力する「ストーリーテリング」は、メディアを通じた「顧客エンゲージメント」を強化するための有効な手法です。
顧客エンゲージメントとは、端的に言えば、顧客の「共感」や「愛着」を得ることです。顧客の「愛着」や「共感」は、製品(ブランド)が持つ魅力によっても、もちろん高めることが可能ではあります。しかし、それ以上に重要なのが、製品(ブランド)が根底に置いている基本的な考え方=コンセプトや設計思想、開発者の思いをきちんと伝えること。なぜなら、人は製品(ブランド)のことをより深く知り、理解すればするほど、それに対して共感や愛着を深めていくものだからです。
同じように、ブランドとしての「企業」もまた、ファクトだけでなく、企業としての立ち位置、考え、意見を明確に打ち出し、消費者・顧客との対話に積極的になることによって、企業に対するエンゲージメントを強化していくことができます。
企業としての考え・意見を社会に提示することによって、「共感」だけでなく「反感」を持つ人、また異論を持つ人も出てくることでしょう。しかし、だからこそ、そこに「会話」が生まれる余地があるのです。
Coca Cola Journeyは、オウンメディア(自社サイト)、ソーシャルメディアを通じた顧客エンゲージメント強化の取り組みとして注目すべき先進事例と言えます。
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