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    2018.07.25 コラム
    アパレルに学ぶ、売り上げアップでCRM部門が正当な評価を得るポイント

    アパレルなど小売のCRM担当者は、業績が上がった際にしばしばその貢献を認められないことがあります。アパレルのCRMを担当した当時、その壁をNPSで乗り越えられると確信した、コンサルタントの高野一朗に、トータル・エンゲージメント・グループの井上悟がインタビューしました。

    多くのアパレル関係の会社は、入社1年目に店頭に配属され、販売を経験します。高野もアパレル大手のベイクルーズに入社した年、店頭へ配属されました。しかし、売り上げが伸びずに苦労します。お客様の顔を覚えるのが苦手で、新規客と既存客の見分けがつきません。当時は、先輩が担当している既存客に対応するのを良しとしない風潮があったので、お客様へ声をかけるのも躊躇してしまいます。そうするとさらに売り上げにつながらないという悪循環になりました。

    その後、高野は異動によりECの立ち上げに関わります。ECはお客様がどのような商品を買ったかという購入履歴や、どのページを見たかという行動履歴が把握できます。店頭で苦労した高野は、ECでとれたデータを店頭と共有したら、店頭販売員が接客しやすくなることで貢献できるのではないかと考えます。それを代表へ提案し、2009年にCRM部署を立ち上げました。

    CRM部門を評価する新たな指標

    「アパレル企業が手がけるCRMの一番の鍵は会員サービスを充実させ、会員獲得をすること」と高野は言います。顧客が服を購入した後、会員登録をしてもらい、カードを発行し、購入の都度ポイントを追加します。高野がベイクルーズのCRMを整備した2010年から2015年の期間、会員は約5倍に増え、会員による購入比率も大幅に増加しました。

    ところが、その成果を役員に伝えると、次の言葉が返ってきました。
    「それは、ブランド力や、店頭スタッフのがんばりのおかげだろう」?

    同じころ、トータル・エンゲージメント・グループ コンサルタントの藤谷拓と出会い、NPSの説明を聞きます。

    「NPSのリレーション調査では、どのようなタイミングで購入を判断したかという数値がとれる」
    「NPSが高まると、売り上げが伸びる」

    これを聞き高野は、CRM関連部署は会員データ数や売り上げではなく、NPSを上げることを目標にすればよいのではないかと考えるようになります。そして「去年の同時期に、このタッチポイントで売り上げが上がったのであれば、それに関わった部署と一緒に、より具体的な施策を考える」などの取り組みを積み重ねていくことを自部署の役割にしたいと思うようになりました。

    NPSはいつ導入するとよいのか

    いつ、どのようなタイミングでNPSを導入するのが良いのか。高野は、CRMと連携した導入のステップを4つに分解します。

    ステップ1 会員組織・会員サービスをつくる
    ステップ2 CRMで顧客データの購買履歴、属性情報を管理し、RFM分析をする
    ステップ3 顧客時間を測る*
    ステップ4 心理ロイヤルティ指標であるNPSを測る**

    *アプリを活用し、店頭、DMなども含めて顧客がブランドと接点を持っている時間やタイミングを測る
    **NPS調査を活用し、顧客がブランドとの接点を持つ中で、どの接点がロイヤルティに影響しているかを測る

    NPS導入のためには、ステップ1の会員組織があり、ステップ2の顧客データを管理・分析していることが有効です。ステップ2の段階で、さらに顧客の気持ちを知りたいというタイミングが、NPS分析を導入・分析し、それに対して施策を打っていくのに適しています。「NPSは導入するとどんな企業も売り上げが上がる魔法のツールではない」と高野は強調します。準備を整え、さらに「お客様のために何ができるか」という思いのある企業が導入すると、成果につなげることができるのです。そして、顧客時間とも言われる、顧客がブランドと接点を持った時間をアプリなどを活用して把握し、「誰かに推奨したい」という心からのファンを育てていきます。

    NPS導入が適している他の業界として、ある程度の高価格帯でサービスを提供するホテルチェーンや高級レストランなどを高野は挙げます。なぜなら、招きたい顧客のイメージを明確に持ち、その顧客とエンゲージメントを築いていくのが大事な業態だからです。例えば、ホテル予約サイトなどに販売を代理してもらい、直前まで空室があると金額を下げて販売するような、価格だけで選ばれる状況になると、売れ残りのリスクは減りますが、ホテルの利益は当然下がります。

    「サービスや商品を人へ薦めたい」という推奨者を見つけ、批判者への対応を考えることができるNPSは、ファンとなってほしいお客様を描き、その人たちのためのブランディングを固める有効な手段になるのです。

    高野一朗:トータル・エンゲージメント・グループ パートナーコンサルタント

    大手アパレルにて17年間、店舗スタッフから始まりマーチャンダイザーやEC事業責任者を経て、後半7年間は全社横断CRM事業の部署立上げと運営に従事。現在は店舗スタッフとCRMの相乗効果を高める視点から営業企画やコンサルティングを行っている。ファッションブランドやアパレル企業に向けてソリューションコーディネーターとしても活動中。業種業態の枠を飛び越えた、あらゆる機会を創るopportunity creator。

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