2018.01.30
ロイヤルティ
目的と手段を履き違えていませんか?
アパレル・ファッション業界の経営者は総じてミーハーです。経営者に限らずほぼ全員がミーハーだといえます。もともとミーハーだからファッションを志したという人が多く、そのミーハー度合いは、かつて、産業として良い方向に動いていましたが、バブル崩壊後の衣料品不振に陥ってからは、反対に産業を悪い方向に導いているともいえます。それはミーハーだからこそ、その時々の流行りに簡単に飛びつきすぎて「場当たり的対応」に終始してしまうからです。「付け焼刃」とも言いますが、これは現場の施策から商品デザインだけに限らず、経営方針も同様の動きになってしまっています。
目次
目的と手段が入れ替わった「SPA化」や「ネット通販の礼賛」の弊害
場当たり的・付け焼刃が当たり前となってしまうために、アパレル・ファッション業界は往々にして「手段」が「目的」にすり替わってしまうことがあります。過去ならばQR(クイックレスポンス)対応であり、SPA(製造小売り)化でありましたし、今ならば、過剰なネット通販・EC(Eコマース)の礼賛だといえます。それらはいずれもビジネスを拡大するための手段であり道具にすぎませんが、いつの間にか、それらを導入すること自体が目的と化しているアパレル・ファッション企業は少なくありません。これはミーハーの大きな弊害といえるでしょう。
一方、アパレル・ファッション業界の国内の製造関係者は、良くも悪くも「職人的」であり、往々にして頑迷固陋だといえます。そのため新しい技術を取り入れることをひどく嫌がります。今なら、その代表はインターネットやウェブでしょう。これに拒否感を見せる製造加工業者は少なくありません。アパレルブランドや小売店などの「川下」業者は通販を主眼とするインターネットを過剰に礼賛し、「川上」の製造加工業者はインターネットを面倒くさいものとして導入を拒否するという構図が成り立っています。
これらの人々はいずれも「手段」を「目的」と履き違えているのです。
自社の存在を広く知ってもらうためにウェブサイトは不可欠
国内の製造加工業者(織布、縫製、染色など)の多くは、90年代半ばから製造加工地が中国をはじめとするアジア諸国へ移転してしまい、受注量が激減しています。もちろん、変わらない仕事の量をこなしている業者もありますが、それは国内業者の中ではほんの一握りにしかすぎません。多くは新規取引先の開拓が急務となっています。2005年ごろまでは業界紙やマスコミに取り上げられてもらうしか、アピールの場がありませんでしたが、インターネットが普及し、SNSが登場してからは、自社でアピールすることが可能になりました。これを使わない手はないのです。
2008年ごろからはインターネットが完全に普及し、人々は何かを調べたいと思ったときに、インターネットで検索をすることが標準となりました。今、皆さんも旅行や出張の際、目的地の住所や電車の乗り換えなどはまずインターネットで検索しているでしょう。
そうなると、インターネット検索に表示されない施設は訪問の対象外になります。当たり前です。そこに表示されないということは、見ている人にとっては「存在しないのも同然」だからです。アパレルビジネスにおいてもこれは同じで、ブランド側が製造加工業者を調べたいと思ったらまずインターネットで検索します。そこで検索に上がってきた業者にのみ、ブランドは問い合わせします。別にブランドが怠けているわけではありません。逆にそういうビジネス環境に対応せずにウェブサイトやホームページを開設していない製造加工業者が怠慢なのです。
これは小売店も同じです。やっぱり広く存在を知らしめるためにはウェブサイトやホームページの開設は不可欠です。
ウェブサイトで業務が非効率になるサンプル工場の例
その一方で、やはりインターネットやウェブサイトというのは単なるビジネスの「手段」に過ぎないということも心のどこかに留めておく必要があります。
先日、あるサンプル工場の人に会いました。商品化する前の洋服のサンプルを製作する業者です。家族経営の小さな工場で裕福ではありませんが、それなりの仕事量があるそうです。ビジネス規模の拡大を目指さないのであれば、現状で十分なのだそうです。この業者からするとウェブサイトやホームページはほとんど無用の長物なのだそうです。かえって有害だとも言っていました。
なぜなら、インターネット検索でひっかかることで、ネットやEメールを通じた問い合わせがひっきりなしに入るからです。それを処理するのに時間が取られてしまい、かえって業務が非効率になってしまっているそうです。
こうした事例を見るにつけても、インターネットやウェブというのは「目的」ではなく「手段」に過ぎないのだと改めて痛感します。仕事がなくて苦しんでいる業者にとっては必須の手段ですが、仕事が手一杯の業者にとっては、要らざる客を招き入れる不要なツールとなっているのです。
自社・自店にとって、本当に必要な手段の精査を
ECやネット通販にしても同じです。現在、十分に実店舗で売れていて、ネット通販も満足できる金額まで売れているなら、むやみやたらとネット通販比率を拡大する必要はまるでないのです。メディアや評論家はネット通販比率について「高ければ高いほど良い」と言いますが、その根拠はなんでしょうか? ある部分では日本よりも先進的だといわれている香港のネット通販比率は1~2%に過ぎません。要するにネット通販は単なる「道具」に過ぎず、要らない人は要らないのです。別にそれがあるから先進的だということではありません。
?自社・自店にとって、何が不要で何が必要なのかは冷静に考えねばなりません。単に「流行りだから」とか「トレンドだから」で飛びついても何の意味もありません。インターネットもネット通販もEコマースもそれらは「道具」に過ぎず「目的」ではないのです。くれぐれも目的と手段を履き違えることがないように気を付けてください。
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